バリオスの「扇の国」

偉大なクラシックギター作曲家のアグスティン・バリオス・マンゴレ(1885年ー1944年パラグアイ)は実に多彩な曲を残しています。南米の民族音楽的なもの、ヨーロッパ的なロマンティズムなもの、バロック様式の曲など・・。

その中で、これまた異彩なのが「扇の国」という曲で、とてもノスタルジックで美しい曲です。この作品は1928年にブエノスアイレスで作曲・出版されました。「扇の国」という名前は、当時の貴婦人が使っていた扇子に由来していて、ベニーテス編では副題で「日本へのノスタルジー」と記載がありますが、本来は必ずしも日本を指しているわけではないようです。

この曲のタイトルはスペイン語でPais de Abanico
英語表記ではCountry of the Fan
この最後のFanの部分をみて、いつのまにかFun(楽しい)と勘違いしていましたが、
今更ながら(笑)シーリングファンのFan「扇」と同じ綴りであることにきがつきました。

この曲は、低音を残しながら、指を広げて弾く部分が多く、けっこう左手が大変です。
その手の形が「扇」みたいなので、そう命題したのかな・・なんて冗談な憶測もしてしまいます。

まず印象的なメロディーは、何度も出てくる複付点音符(ふくふてんおんぷ)のはねるリズムです。

複付点音符とは、付点音符にもうひとつ黒い点がついた音符です。長さの変化はひとつ目に付いた点のさらに半分の長さがプラスされます。なので、普通の付点よりも抑揚感が強くなります。

たとえば、この部分は付点はついていませんが
思わず複付点をなんだかつけたくなってしまいます。
(youtubeではたまにそのような演奏も散見されます)
そんなところが何カ所かあります。

それから楽譜についてですが

この51小節目の1拍目のラに♭をつけたくなります。
この方が自然な響きで、ラのナチュラルだと不協な響きとなります。
これもありという気がします。

それから下記の部分はフラットがついているものとナチュラルがついてあるものがあるようです。

ただ、低音がシからラに半音づつ下がる過程として、私は♭をつけて弾きたくなってしまいます。

また、楽譜のリピートに関しては
ベニーテス編はハーモニクス部分で曲が終わっていますが、
youtubeなどを見ているとハーモニクス部分から、ようやくダ・カーポして前半の下記の部分で終わる演奏も多々あります。

 

ハーモニクスの部分ですが、下記のような②③⑤で弾かれることの方が多いですが、

下記のような楽譜があり、和音の一番上の音は①5フレットをつかって弾く方もいます。

 

いろいろ楽譜的に研究要素満載な奥深い曲です。